参議院新清水谷議員宿舎建設に向けて 緑の東京都市空間の継承
建築家 芦 原 太 郎
1.「東京」の緑史・地史

赤坂プリンスと緑
皇居から紀尾井町、新宿御苑に続く緑の連なりは、江戸時代から守られてきた都市の貴重な資産である。
法政大学・陣内秀信教授の『東京の空間人類学』(
※1)では、東京は、江戸・明治と建物は変わってきても、
敷地の区画は継承されてきた特徴があり、特に大名屋敷は大使館・ホテル等に変容してきたが、その敷地区画や庭園の緑は守られてきた、
と述べている。このように敷地の区画と緑を保存・維持してゆくことは、東京の歴史的資産継承の観点から重要であることが伺える。
2.2050 年の「東京」

TOKYO2050 fibre city より
東京大学・大野秀敏教授による「TOKYO2050 fibre city」(
※2)という研究を参照したい。
この研究は、確実に起こる人口減少を見据えた2050 年の「東京」の姿を都市計画視点から提示している。
2050 年には人口が現在の3/4 と仮定されており、その上環境問題なども抱えた次世代において、いかに上手く都市をコンパクト化してゆくかを提唱している。
その手法として更なる開発や建設ではなく、減築(げんちく)を行いながら緑のネットワークを広げ、より豊かなまちへと成長してゆく姿が提示されている。
来るべき未来へ向け、残された貴重な緑を守り、更にはその繋がりを補強してゆくことが大切なのである。
3.終わりに
このように、我々が今ある緑や区画を保存してゆくことは、日本の首都「東京」の資産価値を向上させ、次世代へのアシストとなる非常に意義あることだと考えられる。
またこのことは、これまで行われてきた文化の継承でありながら、現代を生きる我々に課せられた未来への宿題なのかもしれない。
時代を経てもホテル、大使館、公園などに引き継がれてきた区画と緑は、文化的に利用され、そして親しまれている。
紀尾井町に予定されている参議院新清水谷議員宿舎も、これまで先人によって保持されてきたまちの秩序を引き継ぎながら、後世に語りついでゆく形で成されることが望ましいのではないだろうか。